大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成6年(行コ)126号 判決 1995年3月29日

英国領香港ヘネシーロード二五八 カルテックスハウス二階

控訴人

チャン・ピーター・ポー・ファン

東京都目黒区東山三丁目二四番一三号

被控訴人

目黒税務署長 中村直記

主文

本件控訴をいずれも却下する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

理由

第一本件控訴に至る経緯

一件記録によれば次の事実を認めることができる。

1  控訴人は、被控訴人を被告とし、被控訴人が控訴人に対し、平成二年六月二九日付けでした控訴人の昭和六三年分の所得税決定及び無申告加算税賦課決定の取り消しを求めて、平成四年一一月七日に原審裁判所に訴えを提起した。

この訴状は英語で記載されていたが、日本語による訳文が添付されていた。

2  控訴人は、訴訟代理人を選任せず、また日本語に通じなかったため、原審裁判所は通訳人を口頭弁論に立ち会わせて、審理した。

3  控訴人は、原審第一回口頭弁論期日において、控訴人宛の訴訟書類は領事館を通してではなく、直接控訴人の住所地(当時の住所地も肩書住所地に同じ)に郵送してほしい旨の希望を表明した。

4  控訴人は、原審第二回口頭弁論期日において、判決正本には訳文添付は不要であるとの意思を表明した。

5  原審裁判所は、平成六年二月一日に控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡し、英国との間に締結された領事条約に基づき在香港日本国総領事に送達を嘱託し、平成六年四月六日に右判決(日本語による判決正本)は控訴人に対し適法に送達された。

6  控訴人は、英語(但し控訴人の氏名のみ漢字併記)で記載された控訴状と思われる書面を同年六月二二日に原審裁判所に提出した(平成六年(行コ)第一三四号)。

7  控訴人は、同様の書面を同月二四日に当裁判所に提出した(平成六年(行コ)第一二六号)。

8  控訴人は、右書面の日本語訳文と思われる「上告状」と題する書面を同年一〇月二四日に当裁判所に提出した。

第二判断

民事訴訟法三六六条一項は、判決に対する控訴期間を、その送達を受けた日から二週間以内と定め、かつ同条二項は、この期間を不変期間と定めているから、原判決に対する控訴人の控訴期間は平成六年四月二〇日の経過をもって満了しているので、前記の控訴状と思われる書面を控訴人が原審裁判所あるいは当裁判所に提出した時点では既に右期間は経過していたことになる。(また、前記の事実を勘案すれば、訴訟行為の追完を認め得るような事情もない。)

したがって、本件各控訴は、いずれも不適法なものであり、その欠缺を補正することができないから、同法三八三条に基づき、口頭弁論を経ることなく却下することとし、控訴費用の負担について同法九五条、八九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 三宅弘人 裁判官 谷澤忠弘 裁判官 松田清)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例